No.109 現役時代の課題は、14年経った今に生かされている

今日からコーチングスクールの新規クラスが始まりました。
毎回、クラスがスタートする時は
人材教育の世界に足を踏み出した日のことを思い出します。


今から14年前の平成17年。
私が本格的に人材教育の世界に一歩踏み出した年でした。

平成16年に厚生労働省から
『新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会報告書』
が打ち出され、その後、新人看護職員研修に関する通達が流れました。

現場の看護教育が大きく変容した時代の幕開けでした。

私の現場では、急遽平成17年春から
新卒者教育委員会が新たに発足。
教育に対し熱い想いのメンバーが召集されました。

その時のことは今でもはっきりと覚えています。
準夜勤務の時、
看護副部長が私を訪ねて病棟に来ました。


新卒者教育に力を入れてやっていきたい。
それには、このメンバーの力が必要なんだ!
この委員会に入ってほしい!


いつも穏やかな副部長ですが、
この時はただならぬ気迫を感じました。
準夜勤の最中でしたが、
この日は、
体の底からこみ上げる
『熱いもの』
を感じ教育畑に踏み込む覚悟が決まった夜となりました。


この決意から半年後、
すでに実習指導者を数年間経験していた私は、
静岡県実習指導者等講習会で3ヶ月間学び
現場教育者としての専門性を高めました。

ここに掲載したのは、
修了した時の提出レポートです。
まだ「コーチング」の存在自体も知らない、
30代前半の若輩者だった私が書いたレポート。
少々ツッコミどころもありますが、
懸命に育成について考えられています。
医療機関に限らず、
様々な企業・組織・チームにも応用できる基本的な軸が表現されていると思います。
この時の課題は、
現在、多くの人にお伝えすることができています。

思い切って公開します。
よかったらご覧ください。


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実習指導者として抱えている問題解決に向けての行動目標と具体策

1. はじめに
実習指導者を取り巻く環境は、多忙で学生の指導は二の次という風潮が少なからずあり、指導者は自分のやりやすい指導を行ってしまう。実習指導者である前に、弱さを持った人間だということを謙虚に認識した上で、本研修での「指導者は自分がされたような指導をする」という問題点の解決について検討した。


2. DoingとBeing
Doingは、「何かをすること」。何かを積極的に働きかけ、悪いところがあればそれを直していく問題解決志向型であり、私達の働く病院の文化そのものである。
一方、Beingは、「共にあること」。これは私達の看護そのものであり、醍醐味でもある。しかし、私達指導者は「~させる」など、看護者でありながら学生指導となるとDoingに囚われてしまう。Beingの要素に意味を見出せず、現実的ではないと開き直るのは看護職として本末転倒である。Beingを基盤とし、それを補う形でDoingの要素を発揮すれば、バランスが保たれるのではないか。


3. Beingを補うDoing
実習そのものが授業である。机上の学習と同様、学習目的・目標など着目しなければならない。そこには「~させる」などの表現が入ってくるため、Doingの要素が強いと思われがちである。しかし、その根底には学生を尊重した関わりなどのBeingが存在し、これまでの指導に不足していたと気づくことができた。


4. 問題解決のための行動目標
【問題】
「指導者は自分がされたような指導をする」

【行動目標】
①学生の学習レディネスや発達段階を確認できる
②学生の学習進度はそれぞれ違うことを認識できる
③学生と共にある姿勢で、学生の緊張を和らげるような関わりができる


5. 問題解決のための具体策
①ケアの場面ごとに学習内容を確認、学習不足のようなら補足をし、ヒントを与えて発問していく。
 (事前学習していないことを責めない)
②記録物提出の遅れがあっても、理由を聞き、どこでつまずいているのか、学生と共に絡んだ糸をほどいていく。
③すでに取り組んでいるが、学生が病棟に来たら、学生より先に指導者から挨拶することを継続していきたい。
④学生が順番に個別指導を受ける場面では、後ろで待っている学生の緊張が増すため、指導者を囲み誰もがメンバーの考えや指導者からの助言を共有していける環境を作りたい。

以上4点について指導にあたるスタッフにも周知していきたい。


6. おわりに
実習指導者は患者に優しく、学生に厳しい性質を受け継ぐ歴史があったと思う。今回の問題点は、Beingの理解によって解決していくだろう。一方、指導者である私達は弱さを持った人間として、自分に向けられるBeingを感じ取っていきたい。この考えに至るまでには、諸先生方の講義やグループワークがあったからだ。今回私が感じた、仲間の私に対するBeingを忘れないよう、現場に戻り看護教育に還元していきたい。

平成17年11月